「わが谷は緑なりき」41年(A)
監督:ジョン・フォード

炭鉱夫の父をもつ炭鉱の谷ロンダのモーガン一家。

父の格言。
「金は使うためにある。
 体と頭を使って稼ぎ、目的を持って気持ち良く使うべきだ」

谷に響く男の歌。
体に残ったすすは洗っても落ちずにシミとなり、谷の男の勲章だった。
この男くささが全てを物語ってます。
家族は貧乏ながらも一生懸命生きていく。

炭鉱主から賃金をカットされてストを起こす労働者たち。
昼間から大の男たちがやることもなく、次第に心が荒んでいき
家族のように親しかった友人たちは、ストに反対していた父に
怒りの矛先を向ける。
そんな時、末っ子のヒューが凍傷にかかってしまう。

「神が大人になるチャンスを与えてくれたんだ。
 磨かなければランプも輝きを失う。だから心を磨くんだ」

医者にもう歩けないと言われて悲観するが
やさしい牧師の励ましと本を支えに勇気づけられ希望を見出す。

そして、姉と牧師の悲恋。
金持ちと望まない結婚をさせられ、仕舞いに離婚してしまい
世間から冷たい目でみられる。
「握手はしない。お互いの心の中で行きよう」と言って
ヒューと別れて谷を去る牧師。
渋くてかっこよくて、ジーンとさせられます。

兄弟は皆、炭鉱夫なのにヒューには学を身につけさせたい父の愛と
父を誇りに想い、炭鉱で働くことが最高の生き方だと信じるヒュー。
いじわるな学校の先生といじめっ子を見返すために
ケンカの仕方を教えてもらって、ぎゃふんと言わせる。
本当に父としての威厳、力強さ、それを尊敬する純粋な子供心が
感動的です。

「父のような男に死という言葉はない。
 今も記憶の中に生き続け、愛を教えてくれる。
 わが谷は緑だった」

ラストは鳥肌が立って涙ぐんでしまいましたよ。
同じ血を引く家族の絆、愛の力の強さ、
命が引き継がれ生きていくことの素晴らしさを描いた名作です。
「わが谷は緑なりき」
この緑には強く逞しい生命の息吹、
そして掛け替えのない故郷を思わせます。

わたしが初めてみたジョン・フォードの作品でした。
西部劇で有名なフォードですが、この作品や「怒りの葡萄」、
「タバコ・ロード」などの詩劇も超一流です。

わたしはこういう静のフォードが好きですね。
その後に「駅馬車」などの動のフォードをみたので。
初めてのフォード作品がこれで、ヘンな固定概念がなかったのが
今となっては本当によかったです。